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第77回 日本映画テレビ技術協会 映像技術賞受賞

<TVドラマ部門> 創作ドラマ大賞「ケの日のケケケ」
[撮影] 岡野 崇 (制作技術部 撮影) [照明] 鈴木 岳 (制作技術部 照明)

<ドキュメンタリー部門> ゴッドハンド 流転の秘宝を復元せよ
[撮影] 岡野 崇 (制作技術部 撮影) 鈴木 正実 (株式会社Vision1)

受賞者コメント

[撮影]岡野崇カメラマンは「ドキュメンタリー」と「TVドラマ」2つのジャンルで受賞。2ジャンルの同時受賞は、日本映画テレビ技術協会 映像技術賞始まって以来初の快挙となります。

【岡野崇さん受賞コメント】

2部門での受賞、身に余る光栄です。「ドラマはドキュメンタリーのように、ドキュメンタリーはドラマのように」という先人の教えを自分なりに咀嚼しながら日々撮影に向き合ってきました。今回の受賞も決して自分が独力で成し遂げた成果ではなく、私を育んでくださった先輩・仲間たちのおかげに他なりません。ご恩に報いるため、慢心せずますます腕を磨いて、社会に貢献できる撮影者を引き続き目指していきたいと思います。

[照明]鈴木岳ライティングディレクターは「TVドラマ」部門において2009、2013年に引き続き3度目の受賞です。

【鈴木岳さん受賞コメント】

今回で3度目の受賞となりました。今までの作品と同様、脚本に向き合いスタッフと議論を重ね、役者の気持ちに寄り添い、皆で愚直に挑戦していった結果が実を結びました。「ドラマは総合芸術」スタッフと役者が互いに支えあい、高みを目指すことで至高の作品が生まれます。今回もそんな素敵な作品に出会え、喜びとともに照明という仕事ができる幸せと誇り感じました。今後も日々精進し、更なる高みを目指して挑戦を続けていきます。

総評

※「映画テレビ技術」2024年11月号(No.867)から抜粋

<TVドラマ部門> 創作ドラマ大賞「ケの日のケケケ」

感覚過敏(=聴覚や視覚等々が特に過敏)の女子高生が主人公の青春ドラマ。部活動強制の学校で「何もしない、『ケケケ同好会』」を設立するまでが描かれる。ティルトシフト効果を活用したレンズワークを上手く取り入れたことで、 感覚過敏を初めて知る人が想像しやすいよう、視覚的な表現に挑戦した成果が表れていた。魅力的なミドルショットも多く、 前向きなヒロイン像を撮影技術で的確に切り取っている。 照明の照度や角度、スモークによる光線の演出は秀逸で、ヒロインの心情にそっと寄り添う温かさが感じられる設計だった。光に敏感な彼女を優しく包み込むような明かりと、眩し過ぎると彼女が感じている明かり、それらの違いも計算されており、完成度が非常に高い。透明感溢れる映像美により、生きづらさを抱える人々への勇気や希望が、自然と心に伝わってきた。

<ドキュメンタリー部門> ゴッドハンド 流転の秘宝を復元せよ

国宝級の陶磁器についた傷や破損を完全に消してしまう超絶技巧=ゴッドハンドを持つ復元師に迫ったドキュメンタリー。人類の宝を後世に繋ごうとする彼等の生き様を描く。1mm以下の針先を駆使した作業工程の撮影にはどれ程の苦労が費やされたのか、想像に難くない。標準レンズのドキュメンタリー部分とマクロレンズのディテイル描写部分の切り替えも素晴らしく、入念な下準備と工夫はもちろん、現場での判断力には研ぎ澄まされたセンスを感じさせる。視聴者はあまりの神業に息をのむこと必至だが、その神経が擦り切れるような緊迫感そのものを、カメラマンは覚悟をもって的確に捉えている。自身が対象と真っ向から向き合い、一つ一つのカットで勝負を挑んだことが伝わってきた。